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NYMRとWSR [イギリス(無用の用)]

 さて,いよいよNYMRとWSRに行ってみようと思う。「いよいよ」というのには訳がある。それぞれ30マイルほどとイギリスの保存鉄道の中では屈指の長さを誇る保存鉄道である。30マイルといえば,48キロ!まともな人たちのやることではない(英語のcrazyは,時として,すごくいいね,の意で使われる。こういう言葉がすっと使えるようにはなりそうもない。)。あっ,NYMRは,North Yorkshire Moors Railway(ノースヨークシャー・ムーアーズ・レイルウエイ),WSRは,West Somerset Railway(ウエスト・サマセット・レイルウエイ)の略です。

 略語といえば,英語の略語はよく分からない。日本語だってコンビニとか田都とかいうけれども,それぞれコンビニエンスストアと田園都市線の略だとすぐ分かる。コンビニをCVSと略すのは業界人だけだし,DTSとか言われたらもう分からない。
 例えば,asap。ちなみに,as soon as poosible の略です。返事くださいねaspsasap,みたいに使う。ちなみに,as soon as possibleを一語で,というのは英語の問題で見たような気がする。正解はimmediatelyだったと思うのだが,実はasapも間違いではないということになる。
 大学入試でもいざ解答用紙を集めて,asapが答えにあったら,採点者一同鳩首会議必至である。入試というものは,正解の可能性がある答えに対しては慎重に対応しなければならない。
(as soon as possibleなので,ASAPですね。訂正します。)

 
 話が脱線してしまった(鉄道だけに)。NYMRは,イングランド北東部のピッカリングからゴースランドを結ぶ。季節によってはゴースランドから海辺のウィットビーまで普通の鉄道(ネットワークレイル)に乗り入れる。ピッカリングは山の中の行き止まり駅だが,かつてはさらに南に線路が延びており,そこからロンドンから海水浴客のための列車が走ったこともあったという。
 線路はムーア(荒野)の谷の中を走る。勾配が続くところもあり,蒸気機関車は盛大に煙を噴き上げドラフトの音を響かせる。長さだけではなく,大型の蒸気機関車がたくさん保存されているのもこの鉄道の魅力である。やはり炭坑用の機関車とは迫力もスタイルもスピードも違う。月並みながらかっこいい。 

 また,ゴースランドを出てすぐ200mぐらいのトンネルもある。汽車がトンネルをくぐるときは,窓を閉めるのだ,と一緒に行った私の両親は教えてくれた。そう言えば,子どもの時そんな話を聞いた覚えがある。トンネルの中を走る列車の車内には白熱灯がともっているものの薄暗い。自分自身の実体験としては汽車の旅は知らない世代であるが,想像するのは,「わたし」が「先生」の手紙を読んでいるところである。汽車の時代の旅とはこんなものだったのだろう。

 一方,SWRは,イングランド南西部・コーンウォールにある。3年前の夏休みに語学研修の引率でこの地方に滞在したことがあった。することのない(まー,他の日も何もすることはなかったのですが,夏休みはこれで終わりました。)土曜日に一人で出かけてみた。私が行ったときは,一日4本の列車が2往復ずつしていた。うち2本が蒸気機関車,1本がディーゼル機関車の牽引。残りの1本がディーゼルカー。乗ってしまえばたいした違いはない。

 当時の日記によれば,途中のウォッシュフォードという小さな駅のおじいさんに話を聞いている。曰く「ボランティアで25年。バースにすんでいて休みのたびごとにここに来て,駅員をやっている。泊まるところは鉄道に寮がある。」駅はきれいにペンキを塗られていたし,花壇には色とりどりの花が咲いていた。自分の「仕事場」にこれだけ愛着をもてるのは幸せなことであろう。このひとは,そんなに入れ込んで,家庭とか大丈夫か?とも書いてある。夫婦で保存鉄道好きという人も少なくないのがイギリスだが,しばしば忙しさは家庭を崩壊の危機にさらす。どうせ崩壊するのなら,それだけの価値のあることに入れ込みたい。この駅は,このおじいさんにとってそれだけの価値があるのだろう。家族をおいての夏休み故に,そんなことを考えたのを覚えている。

 NYMRとWSRの共通点は,それぞれ海辺の町を終点とするという点である。夏の休日は海辺で海水浴をしたり,日光浴をして過ごすのが,この薄暗く肌寒い国の人々の楽しみらしい。それを示すエピソードには事欠かない。 
 例えば今年の10月のはじめは,イギリスでは観測史上最高の暑さであった。海に向かう道路が渋滞し,旅行サイトの検索件数やATMからのキャッシュの引き出し額が前年比数倍になったとかいうニュースが報じられていた。 住んでいる家の近くには運炭鉄道の廃線後があるが,夏の休日のみ海辺に向かう炭鉱労働者のための臨時列車が運転されていたという。そういえば,きかんしゃトーマスにもしばしば,子どもを海に連れて行く列車の話が出てくる。
 ヨークの鉄道博物館はよーく知られているが,それよりさらに北のシルドンに別館があることはあまり知られていないと思う。ここには,キャンピング・コーチ,つまり海辺の街の引き込み線に止めて使う寝台車みたいなものが展示されている。寝台車といっても貨車の親戚のような様相である。説明によれば,あまりお金のない人たちが泊まったのだという。
 
 NYMRのウィットビーにせよ,SWRの終点マインヘッドにせよ,その他訪れた海辺の町には,往時の賑わいには及ばないのだろうが,未だに数階建てのB&Bやホテルが軒を連ねている。フィッシュアンドチップスをパクつくイギリス人に混じって(彼らは海辺では魚料理,すなわちフィッシュアンドチップスを食べるものだという固定観念があるらしい。),過ごす海辺の休日はなかなか素敵である。そこいらの売店で売られている巻き貝やカニの塩ゆでもなかなかいける。醤油とわさびがあればなおよい。

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 写真はWSR,Blue Anchorにて。これもまたイギリス社会の一こま。


 入試に関する記述は,もちろん所属組織の公式の見解ではありませんし,私が英語の出題に関わっているとかいないとか,そういうこととも全く関係ありません。
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