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子どもの学校inイギリス(その3・アピール編) [在外研究(暮らし)]

 アピールは,4月20日に州庁であった。アピールは,3人のアピールパネルの前で,州庁の教育部局のフレッドさんが,今回の決定の経緯について説明し,私が異議を申し立てることになる。アピールの日時等をアレンジしてくれたグラハムさんが書記を務めるほか,わたくしを含め,合計9人の出席者があった。

 まず,パネルの中央に座るマーソンさんが,出席者を紹介し,我々は州庁からは独立した立場で双方の主張について検討する,と述べる。続いて,パネルの正面,わたくしの右隣に座るフレッドさんが,今回の決定の経緯について説明する。確かに合同クラスをとって,法律上の問題はクリアしているが,Year1は,すでに34人のところ39人を受け入れてしまっている。彼らが高学年になったとき困るかもしれないので,どの学年も定員以上の受け入れは避けるべきだ,というようなことを説明している。違うのかもしれないが,そう聞こえた。

 説明が終わるとパネルから,「プロフェッサーヒノは,この件に対して何かありますか?」と尋ねられた。主張は書面で提出してあるので,思わず,Nothing particularと答えそうになったが,ここでは彼の主張に反論するべきなのだろう。そこで,「彼の主張はもっともであるが,彼は将来起こる問題について述べていたと思う。我々は必ず1年で帰るので,トモノリの入学は,将来にわたって影響を及ぼす問題ではない。」式のことを述べる。

 ここで一度我々が退席し,数分間パネルが討議した後,結論が示された。トモノリを受け入れる,ここでの生活を楽しんでねとのこと。これにて一件落着。グラハムさんが州庁の出口まで送ってくれる。建物を出るとよく晴れていて前庭の八重桜が鮮やかである。うまくいったのは,出席者全員の親切な態度のためだとおもう。フレッドさんも含め,ゆっくり丁寧に説明してくれたことは書いておかねばならない。

 行政の決定に異議を申し立てるプロセスが,行政内部にちゃんと用意してあって,行政機関とは独立した市民がその当否を決定する,というプロセスを経験したのは得難い経験であった。イギリスでは一般的なプロセスなのかもしれない。例えば,地元紙には,警察がパブの営業時間に対する規制を強化したいが,最終的にはアピールを経て決定されるであろう,というニュースが載っている。そもそも成熟した市民社会においては,権力は,個々の幸福を実現するために存在するのであって,過剰であってはならない。この理想は市民による不断の関心によって実現されているのである。アピールはこの手段なのだろう。

 見聞したことはないので詳しくはわからないし,違う仕組みかもしれないが,同様の理想を実現する仕組みがあるはずである。取締役に対するガバナンスの仕組みが各国違っていいように,日本には日本の仕組みがあるはず。アピールという仕組みが優れている,と主張するつもりは毛頭ない。コーポレートガバナンスについての知識に基づいて推測すれば,日本では行政官の良心と裁量に任されてしまいそうな部分を透明にする,というのがイギリス式なのだと思う。
 日本だってイギリス同様に,個人を尊重することは社会で共有された価値観ですからね。
 

 ところで,個人の勝手を言ってご迷惑をかけ申し訳ありません,格別のご配慮ありがとうございます,という気持ちになるのは,何ででしょうね。日本人だからですかね...。
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