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イギリス在外研究(リーダーシップ論) [在外研究(暮らし)]

 菅首相はどうするべきなのか?

 というニュースは,ここイギリスでは全く報じられていない。それはさておき,どうするべきなのか。,少数派に与するフォロワーアプローチのリーダーシップ論者なりに考えてみようと思う。

 「人々は,リーダーシップが実際以上に結果を支配すると思っているからこそリーダーのいうことを聞くし,またうまくいっていないときには,実際の責任がなくともリーダーを非難する。」という仮説がある。リーダーシップの幻想理論(Romance of Leadership)と呼ばれる一連の研究である(リーダーシップのロマンス理論と訳す人々がいるが,そう訳すと意味不明である。)。
 いや,結果を左右するのがリーダーシップだ,と思っている人はW杯を考えて欲しい。どんなに優れた監督を連れてこようとも,日本代表が「イングランド,ドイツ,ブラジル,日本」からなる一次リーグを突破するのは無理であろう。この例は極端だとしても,リーダーが全知全能ではない以上,リーダー以外にも結果に影響を与える変数は山のようにある。

 さて,上の仮説は前半部分と後半部分に分かれるが,前半はマインドルというアメリカの研究者が,この関係を見いだした。後半はどうか?詳しくは,『早稲田商学』423号に書いた実証研究を読んでください,なのだが...。実証研究からいえる答えはYes。ゆえに,菅辞めろ辞めろの声が,巻き起こるのは理解できる。

 また,リーダーシップは,ついてくる人の期待の上に成り立っている。リーダーが,いや~,責任ないので,辞めたり謝ったりしません,といっておれば,自分に対する期待を低くしてしまうであろう。そういう意味からはとっとと辞めた方がよいのかもしれない。

 ただし,ここ数年,安倍,福田,鳩山と,首相は本当にくだらないことで簡単に辞めている。本当に辞めなければならない理由があったのは麻生首相だけである。その結果,「総理大臣はなんかうまくいっていなそうだったら,すぐ辞めるものだ。」という暗黙の期待が政界にも国民にも蔓延していないか。ここで菅も辞めれば,この暗黙の期待は変わらないであろう。次の首相もあっという間に支持率低下,退陣に追い込まれるに間違いない。菅おろしに一生懸命な民主党も自民党も総理大臣の座を軽くし続けているのではないか。自分が首相になったときに困ると思うのだが,いや,賢明なセンセイ方だから,辞めないことを見越して辞めろ辞めろとおっしゃっているに違いない。

 日本が置かれているのは,「イングランド,ドイツ,ほにゃほにゃ,日本」の一次リーグを突破するぐらい困難な状況である。ここは誰がやってもそう大差はない。私が期待するのは,続投である。解散総選挙ができるまで粘り続けて欲しい。打たれても,たたかれても,粘り続けることで,首相は,選挙に負けたとき以外は辞める必要のないポジションだ,という空気を作り出して欲しい。それが,政局に左右されない政治につながるのではないか。首相といえどもできることは限られているが,毎年繰り返される総理大臣おろしの混乱はますます政治ができることを,そして国民の期待を小さくしてしまうと思う。

 さて,イギリスに来て3ヶ月と少し。ようやくイングランド北部にも夏が来たようである。日本のことは気がかりだが,充実した研究生活である。受け入れ先になってくれた先生,また同僚の皆さんには本当によくしてもらっている。怪しい英語で研究発表もさせてもらった。よその大学の研究会にも連れて行ってもらった。こういう論文を書いたんだけど,参考になりそうだから読んでみない?とか。また,多くの人が日本について気遣ってくれたこともお知らせしておきたい。
 そろそろ,「在外研究」編は終わりにしようと思う。「在外研究」や「イギリス」で検索して,このブログにたどり着く方々は少なくない。これから在外研究に行こうという研究者の皆さんの参考になるところがあれば,これに勝る喜びはない。もっとも,研究者稼業を離れて趣味の話を書いてみたい,という気持ちがないわけではないのだけれど。


リーダーシップとフォロワー・アプローチ

リーダーシップとフォロワー・アプローチ

  • 作者: 日野 健太
  • 出版社/メーカー: 文眞堂
  • 発売日: 2010/07
  • メディア: 単行本



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コメント 5

大学教員の妻

はじめまして。
主人が在外研究に行く可能性が高くなったと聞いて
色々と不安になり、ネットで在外研究と検索したところ、
こちらのブログに辿り着いた次第です。
初めての在外研究で、場所はイギリスが希望らしいので、
とても興味深く拝読させていただきました。
これまでの経緯を細かくブログにアップしていただき、
本当にありがとうございました。
貴重なお話を知ることができ、少し救われた思いです。
夫婦ともども、段取りを何も分かっていない状態ですので、
ぜひ参考にさせていただきます。
これからもブログを覗かせていただきます。
by 大学教員の妻 (2011-08-03 16:15) 

itankentanotankentai

 こんにちは。
 
 家族も楽しんでやっています。ここでは,各国からの留学生やらポスドクの集まる会が毎週あって,主に家内が参加して交流を深めているようです。また,そういった人の配偶者が主に集まる英語教室もあって,これにも参加して英語も上達させているみたいです。

 子どもも学校生活を楽しんでいるようです。学校に子どもを送っていくと,なにやらコミュニケーションをとっています。もっとも子ども同士のいざこざもしっかりおこしているようです。ただしこれは日本でも同じように思われます。

 そんなわけで,在外研究は家族と一緒の方が経験の幅が広がって楽しめるのではないか,というのが私の感想です。大学以外でも勉強になることの多い毎日で,貴重な日々を過ごしています。

 もっとも,ある人(間違いなく偉い先生)曰く,「在外研究は指折り帰る日を数えて待つもんだよ。」と。それもまた真実かな,とも。

 GP(かかりつけ医)への登録の話など書こうかな,と思っていたんですけど,気が向いたら書くかも知れません。適当なときに催促していただければ。
 
by itankentanotankentai (2011-08-04 21:16) 

NO NAME

お返事ありがとうございました。私は主人との海外生活を楽しみにしてきたので、絶対に一緒に行きたいと思っています。
ただ、私達夫婦はいい歳なのですが、なかなか子供を授かれず奮闘中です。なので、再来年に在外研究に行くという話を聞いて、嬉しい反面、とても複雑な心境です。
もし渡航前に妊娠出産できた場合、渡航時期には、子供が一歳に満たないことになります。私と子供が少し遅れて行くという選択もあると思いますが、それでも二歳に満たない子供を連れて行くのは、色んな意味で問題があるかと。。
もちろん、希望通り子供を授かるかどうかは不確実なので、考えても仕方ありませんが、今はどうしてもこの問題が頭をグルグルしてしまい、素直に在外研究のチャンスを喜び、準備にとりかかることができません。
一歳前後の子供を連れて行くかもしれないことに対して、どのようなご意見でしょうか?
by NO NAME (2011-08-08 10:54) 

itankentanotankentai

 いろいろ事情というものは,人によって異なるものだ,と思わされます。いろいろ悩まれることがあって大変ですね。赤ちゃんの健康について書いてみます。

 私自身の経験から言えば,1歳ぐらいまでの子どもは,意外に病気をしにくいものだ,と思います。風邪だのなんだので病院がよいが始まるのは,むしろ感染の機会が増える3歳以降だったように記憶しています(ちなみに,年長組の年齢になると再び風邪も引かなくなるようになる)。

 ちなみに,私の計画は,こちらで無理な病気・怪我はさっさと帰国する,です。たかが在外研究ですから。というわけで,「困ったら帰ればいいじゃないですか。」
by itankentanotankentai (2011-08-13 21:57) 

大学教員の妻

お返事ありがとうございました。
前向きなお言葉をいただき、少し力が抜けました。
何事も考え方次第ですね。
私は極度の心配性&マイナス思考なので、こういう問題に直面するとどうも身動きがとれなくなるのですが、なんとかなる!と考えて、今は今すべきことを頑張ろうと思います。
地道に情報収集しながら、在外研究の実現を楽しみにしたいと思います。
本当にありがとうございました。また折を見てご連絡させていただきます。
by 大学教員の妻 (2011-08-15 10:44) 

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