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イギリスの蒸気鉄道,しなかったこと。 [イギリス(無用の用)]

 あれもしよう,これもしよう,とやってきたイギリスであるが,しなかったこともある。その一つが,本線を走る蒸気機関車の牽く列車に乗ること。いくつかの組織や個人(!)が,蒸気機関車を持っていて,それが牽く列車に乗ってのツアーがいくつもある。今となっては,乗ればよかったな~,と思う。

 家の近くを走るイーストコーストメインラインにも,先週末,今週末と蒸気列車がやってきた。老若男女のイギリス人に混じって(2週とも同じおじいさんにあった。先週もいましたね,と問うてみると,ここに来るやつは,見逃したことはないね,とのこと。),列車を見送る。
 列車はドラフトと共にみるみる近づいてきて,白い煙をたなびかせてあっという間に遠ざかっていく。

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 写真は12月,ヨーク駅から東へ帰っていくブリッタニア・クラス 70013”オリバー・クロムウェル"
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 いよいよ次回,最終回。


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NYMRとWSR [イギリス(無用の用)]

 さて,いよいよNYMRとWSRに行ってみようと思う。「いよいよ」というのには訳がある。それぞれ30マイルほどとイギリスの保存鉄道の中では屈指の長さを誇る保存鉄道である。30マイルといえば,48キロ!まともな人たちのやることではない(英語のcrazyは,時として,すごくいいね,の意で使われる。こういう言葉がすっと使えるようにはなりそうもない。)。あっ,NYMRは,North Yorkshire Moors Railway(ノースヨークシャー・ムーアーズ・レイルウエイ),WSRは,West Somerset Railway(ウエスト・サマセット・レイルウエイ)の略です。

 略語といえば,英語の略語はよく分からない。日本語だってコンビニとか田都とかいうけれども,それぞれコンビニエンスストアと田園都市線の略だとすぐ分かる。コンビニをCVSと略すのは業界人だけだし,DTSとか言われたらもう分からない。
 例えば,asap。ちなみに,as soon as poosible の略です。返事くださいねaspsasap,みたいに使う。ちなみに,as soon as possibleを一語で,というのは英語の問題で見たような気がする。正解はimmediatelyだったと思うのだが,実はasapも間違いではないということになる。
 大学入試でもいざ解答用紙を集めて,asapが答えにあったら,採点者一同鳩首会議必至である。入試というものは,正解の可能性がある答えに対しては慎重に対応しなければならない。
(as soon as possibleなので,ASAPですね。訂正します。)

 
 話が脱線してしまった(鉄道だけに)。NYMRは,イングランド北東部のピッカリングからゴースランドを結ぶ。季節によってはゴースランドから海辺のウィットビーまで普通の鉄道(ネットワークレイル)に乗り入れる。ピッカリングは山の中の行き止まり駅だが,かつてはさらに南に線路が延びており,そこからロンドンから海水浴客のための列車が走ったこともあったという。
 線路はムーア(荒野)の谷の中を走る。勾配が続くところもあり,蒸気機関車は盛大に煙を噴き上げドラフトの音を響かせる。長さだけではなく,大型の蒸気機関車がたくさん保存されているのもこの鉄道の魅力である。やはり炭坑用の機関車とは迫力もスタイルもスピードも違う。月並みながらかっこいい。 

 また,ゴースランドを出てすぐ200mぐらいのトンネルもある。汽車がトンネルをくぐるときは,窓を閉めるのだ,と一緒に行った私の両親は教えてくれた。そう言えば,子どもの時そんな話を聞いた覚えがある。トンネルの中を走る列車の車内には白熱灯がともっているものの薄暗い。自分自身の実体験としては汽車の旅は知らない世代であるが,想像するのは,「わたし」が「先生」の手紙を読んでいるところである。汽車の時代の旅とはこんなものだったのだろう。

 一方,SWRは,イングランド南西部・コーンウォールにある。3年前の夏休みに語学研修の引率でこの地方に滞在したことがあった。することのない(まー,他の日も何もすることはなかったのですが,夏休みはこれで終わりました。)土曜日に一人で出かけてみた。私が行ったときは,一日4本の列車が2往復ずつしていた。うち2本が蒸気機関車,1本がディーゼル機関車の牽引。残りの1本がディーゼルカー。乗ってしまえばたいした違いはない。

 当時の日記によれば,途中のウォッシュフォードという小さな駅のおじいさんに話を聞いている。曰く「ボランティアで25年。バースにすんでいて休みのたびごとにここに来て,駅員をやっている。泊まるところは鉄道に寮がある。」駅はきれいにペンキを塗られていたし,花壇には色とりどりの花が咲いていた。自分の「仕事場」にこれだけ愛着をもてるのは幸せなことであろう。このひとは,そんなに入れ込んで,家庭とか大丈夫か?とも書いてある。夫婦で保存鉄道好きという人も少なくないのがイギリスだが,しばしば忙しさは家庭を崩壊の危機にさらす。どうせ崩壊するのなら,それだけの価値のあることに入れ込みたい。この駅は,このおじいさんにとってそれだけの価値があるのだろう。家族をおいての夏休み故に,そんなことを考えたのを覚えている。

 NYMRとWSRの共通点は,それぞれ海辺の町を終点とするという点である。夏の休日は海辺で海水浴をしたり,日光浴をして過ごすのが,この薄暗く肌寒い国の人々の楽しみらしい。それを示すエピソードには事欠かない。 
 例えば今年の10月のはじめは,イギリスでは観測史上最高の暑さであった。海に向かう道路が渋滞し,旅行サイトの検索件数やATMからのキャッシュの引き出し額が前年比数倍になったとかいうニュースが報じられていた。 住んでいる家の近くには運炭鉄道の廃線後があるが,夏の休日のみ海辺に向かう炭鉱労働者のための臨時列車が運転されていたという。そういえば,きかんしゃトーマスにもしばしば,子どもを海に連れて行く列車の話が出てくる。
 ヨークの鉄道博物館はよーく知られているが,それよりさらに北のシルドンに別館があることはあまり知られていないと思う。ここには,キャンピング・コーチ,つまり海辺の街の引き込み線に止めて使う寝台車みたいなものが展示されている。寝台車といっても貨車の親戚のような様相である。説明によれば,あまりお金のない人たちが泊まったのだという。
 
 NYMRのウィットビーにせよ,SWRの終点マインヘッドにせよ,その他訪れた海辺の町には,往時の賑わいには及ばないのだろうが,未だに数階建てのB&Bやホテルが軒を連ねている。フィッシュアンドチップスをパクつくイギリス人に混じって(彼らは海辺では魚料理,すなわちフィッシュアンドチップスを食べるものだという固定観念があるらしい。),過ごす海辺の休日はなかなか素敵である。そこいらの売店で売られている巻き貝やカニの塩ゆでもなかなかいける。醤油とわさびがあればなおよい。

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 写真はWSR,Blue Anchorにて。これもまたイギリス社会の一こま。


 入試に関する記述は,もちろん所属組織の公式の見解ではありませんし,私が英語の出題に関わっているとかいないとか,そういうこととも全く関係ありません。
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インスペクション・カーに乗る(エンブシー・ボルトンアビーレイルウエイ) [イギリス(無用の用)]

 Inspection carと聞けば,誰もが,線路の検査をする車両ね,とか,ドクター・イエローみたいなやつね,とか思うに違いない。私も,それをインスペクション・カーと呼ぶとは知らなかった。エンブシー・ボルトンアビー鉄道のホームページにはもっとわかりやすい呼称「ダイレクター・サルーン」と記されている。要は,鉄道の上級の管理者や行政官が,巡回するときに使用した車両のことを意味している。真ん中に机を置けば,図書券を賭けての麻雀でもできそうな車両である。

 イギリスが階級社会の国だからなのか,それとも船乗り,軍隊,警察,鉄道と制服を着てする仕事は縦の関係をはっきりさせることが重要だからかわからないが,豪華な造りである。悪くないいすが置いてある。その時代の機関車は満足な屋根すらなかったことと比べると,同じ鉄道で使われる車両とは思えない。車内は,窓を背にソファーが並び,大きなガラスの窓を備えている。展望車のような車両といったら適切か。管理者は悠々と,機関士は吹きさらしの運転台で,である。

 検査に用いられるのかどうかわからないが,それらしきものは,直通ブレーキ管の圧力計だけである。発車が近づくと,機関車から送られた圧搾空気で圧力計の針が上昇する。もうすぐ発車だよ,と乗客の老夫婦が教えてくれた。蒸気機関車なんかに夢中になるのは子供だけでしょ,とか思いがちだが,この手の老夫婦はどこの鉄道にもいる。この場合,鉄道に対する理解の深さよりは,イギリス人の夫婦関係の方が興味深い。一般に女の人というものは,そんなに電車だの機関車だのに興味を示さない。「ま~,また汽車に乗るの,しょうがないわね。」みたいな会話があるのか否か。この件については,機会を得たらレポートしようと思う。

 小さな産業用(おそらく炭坑で使われていた)の機関車にひかれて出発する。この手の機関車は1960年ぐらいまで作られていたらしい。イギリスで保存鉄道というものがうまくいっている理由の一つに,比較的近年まで蒸気機関車が作られていたことがあげられるのではないか。そもそも割と状態のいい蒸気機関車が,割とお手頃価格で手に入りやすかっただろうし,部品の確保も容易で後のメインテナンスも楽だったのではないか。

 またこの鉄道もボランティアによって運営されている。ドアを開けてくれた(正確には,開けてくれようとしたが力が足りなかったので,他の人が手伝ってくれた)9歳だという男の子が,「僕はこの鉄道のスタッフだよ。」と胸を張る。保存鉄道では10代の子供がだぶだぶの制服やら蛍光色のベストを着て列車に乗っているのを見かける。ちなみに,ある鉄道のスタッフ曰く,16歳にならないとボイラを扱う機関車には乗れないという。

写真はくだんのダイレクターサルーンから。
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タンフィールドレイルウエイ(自称世界最古の鉄道) [イギリス(無用の用)]

 北東イングランドの主要産業は何か。
 今ではほとんどが閉鎖されたが炭坑である。もっと南の方では,石炭の輸送手段として,運河が発達したようだが,ここは丘陵地帯である。運河よりも,木製の運炭軌道(wooden wagonway)が発達したらしい。

 そんな運炭鉄道の一つをルーツに持つのが,タンフィールドレイルウエイである。開業は最初の蒸気機関車の75年前,一般に世界最古の鉄道とされるストックトン・ダーリントン鉄道の約100年前にさかのぼる1725年。

 この保存鉄道は,残された古い機関庫の保存から始まったという。1854年に作られたという機関庫は一般公開されていて,中に入ることができる。機関庫には,100年は経っていようかという旋盤やボール盤,小さな鍛造機や鍛冶屋仕事ができるような炉などが,残されている。実に古めかしいが,油で黒光りしている。小さい部品はここで作ったりするのであろう。庫内では何両かの蒸気機関車が修理されている。

 昔は炭坑で使っていたという小さな機関車が,数両の客車を引いて往復する。この日の機関車は,1891年にロバート・スティーブンソン社で作られたという古典機関車。客車は昔の運炭鉄道の雰囲気を残すようなオープンデッキのかわいい客車。機関車やえもんの世界。ちゃんちゃんかたかたけっとん,と3マイルほどの線路を林を抜け,丘を眺め,往復する。
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 機関士さんは鉄道の職員。
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 機関庫☆☆☆☆☆
 地域色☆☆☆☆
  

 訪問 2011年4月22日 
 
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イギリスの保存鉄道 [イギリス(無用の用)]

 イギリスでは,1960年代に多くの鉄道が廃線となった。理由は経営の合理化である。俗にBeeching Axe(邦訳「ビーチングの斧」:この名前は,合理化を提言した報告書の著者,リチャード・ビーチングに由来する。)。Wikipediaによれば,4,000マイルが廃線になったという。
 
 保存鉄道の多くは,このとき地域で活躍した鉄道が廃線となることを惜しみ,わずかな線路を保存しよう,という地域の人々の動機で始まっている。presavation railwayとか,heritage railwayとか呼ばれている。

 多くがNPO,いくつかが株式会社とその運営形態はさまざまである。また,機関士,車掌に始まり、そこで働く人の大多数が,ボランティアであることは間違いないが,同時に少数ながら有給のスタッフも働いている。ボランティアだけで橋を作り直したり,蒸気機関車の運転を行うのは無理と言うものであろう。また,鉄道によっては観光資源としての役割も大きく,それなりに行政からの支援を受けていたりする。また,汽車から落ちたボランティアが亡くなったので,安全が確認されるまで運行を休止したとか言うニュースもSteam Railwayとかいう,これまたディープな雑誌で報じられてた(と思う)。ボイラや構造物,そのほかについては安全上の規制だって少なくないはずだ。

 そういうわけで,保存鉄道は「汽車好きが集まって話し合いで運営している酔狂な鉄道」と言う牧歌的なイメージだけでは語りきれない。そこにはマネジメントがあるはずである。たしか職能別組織(生産とか販売とか仕事の種類別に分かれている組織)の発祥は,アメリカの鉄道ではなかったか。

 以上のように、経営学者はつまらないことを言う。おそらく、日本でもっとも保存鉄道について詳しく,またその魅力について書いているのは秋山岳志氏であろう。氏のように楽しい話を書けるように頑張ってみようと思う(氏とはお会いしたことはないが,出身学部が同じらしい。商学部出身のトラベルライターって、珍しいのではないか。)。

 とぐだぐだ言うのはともかくとして,次回は、北部イングランドにあるタンフィールドレイルウェイを訪問します(「世界の車窓から」風に。)。




機関車トーマスと英国鉄道遺産 (集英社新書 538H)

機関車トーマスと英国鉄道遺産 (集英社新書 538H)

  • 作者: 秋山 岳志
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/04/16
  • メディア: 新書



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